地球温暖化対策といえば「パリ協定」です。
地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」では、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどを目標に掲げています。これを受けて、世界の122の国と地域が2050年までの実質ゼロを目指しています。
米国は中国に次いで、世界で2番目に温室効果ガスを大量に排出している国で、米国の人口1人あたりの二酸化炭素排出量は、他のどの国よりも多い。
オバマ政権はパリ協定に署名した際、2025年までに2005年比で26%削減すると約束した。
しかしトランプ政権になると事態は変わり、トランプ大統領は「パリ協定は米国に不利益をもたらし、他国の利益になる」と考え2017年6月にパリ協定から離脱する考えを示し、2020年11月に正式に離脱しました。
2021年1月にバイデン政権に変わると「パリ協定復帰」となり、わずか数ヶ月の離脱という結果でした。
DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法は190人の研究者、専門家、科学者の国際的なグループが結集して、気候変動に対する現実的かつ大胆な解決策をまとめています。
分野は「エネルギー」「食」「女性と女児」「建築と都市」「土地利用」「輸送」「資材」に分かれています。
どれも深いテーマなので、今回は「エネルギー」についてまとめます。
風力発電は最も安価なエネルギー
DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法では「CO2削減」「コスト」「節減額」の視点で2050年までの成果をランキングづけしています。
その中でも「風力発電」は効果があり
- 陸上の風力発電はCO2削減(84.6ギガトン)コスト(131.61兆円)節減額(791.8兆円)で総合2位
- 洋上の風力発電はCO2削減(14.1ギガトン)コスト(58.35兆円)節減額(81.59兆円)で総合22位
となり、近年コスト削減が続いているためおそらく10年以内に、風力は発電施設の中で最も安価なエネルギー源になるそうです。
風力エネルギーの課題は
- 天気によって風が変化するのでタービンが回っていない時間があること
- タービンの騒音が大きく、景観が悪く、渡り鳥にとっては命取りになるという批判
・広い地域にまたがって断続的な風力(および太陽光)発電ができれば、相互接続されたグリッド(送電網)で必要な場所に電力が送れる
・最新の設計ならば低速回転のブレードや渡り鳥の移動経路を避けた設置方法で対処可能
風力は化石燃料と比べて水の使用量が98〜99%少なくなります。
石炭、ガス、原子力は冷却のため大量の水が必要です。農業よりも多い年間83兆〜235兆リットルもの水を消費しています。
原子力の場合は冷却水による自然環境への影響も懸念されています。
これまで風力発電のネガティブな情報が多かった印象でしたが、30年後には主流となるエネルギーになるとの予測は未来を明るくしていると感じました。
太陽光発電を圧倒的に増やそう
地球温暖化を逆転させるどんなシナリオにも「今世紀半ばまでに太陽光発電を圧倒的に増やす」対策が入っています。
ソーラーファームとは何百、何千、場合によっては何百万ものソーラーパネルを置いた、農場のような太陽光発電のことで、発電容量は数十メガワット、数百メガワットに達します。
屋上ソーラーは個人の家やマンション、ビルなどで活用される小型の太陽光発電で、世界10億人以上いるグリッド(送電網)を利用できない人々にも活用されています。
「太陽光発電」の2050年までに地球温暖化を逆転させる効果は
- ソーラーファームはCO2削減(36.9ギガトン)コスト(-8.62兆円)節減額(537.14兆円)で総合8位
- 屋上ソーラーはCO2削減(24.6ギガトン)コスト(48.48兆円)節減額(370.22兆円)で総合10位
太陽光発電はすでに世界中で活用されており、ソーラファームの建設もだんだんと安くなっています。
ソーラーファームのメリット
- 建設費が石炭、天然ガス、原子力の発電所より安い
- 年間2億2,000万〜3億3,000万トンの二酸化炭素が削減
ソーラーファームのデメリット
- 太陽が昼間照り、日射量は変動する
- 発電量のピークは真昼で電気使用の需要と供給のずれがある
・地熱や風力といった太陽とは異なるリズムの再生可能エネルギーを一緒に運用
屋上ソーラーについては日本でも行われていますが、昼間の余剰の電気をグリッドに売電し、夜間や日照不足のときに電気を購入することで電気代が相殺されます。
時代が進むと、いろんな建物の屋上ソーラーが当たり前になりそうですね!
火山大国の日本にこそ地熱を
地熱エネルギーは文字通り「地球の熱で」蒸気と熱水の地下貯留層を形成します。
なんと!発生する熱エネルギーは現在の世界全体のエネルギー消費の約1,000億倍にもなります。
「地熱発電」の2050年までに地球温暖化を逆転させる効果は
・地熱はCO2削減(16.6ギガトン)コスト(-16.64兆円)節減額(109.14兆円)で総合18位
地熱エネルギーを活用するためには、熱、地下貯水槽のその熱を地表まで運ぶ水または蒸気が必要です。
地熱に理想的な条件がそろった場所は地球の10%未満ですが、技術の進歩によって可能性は広がっています。
日本は世界第3位の地熱資源大国です。
発電ポテンシャル(能力)が2300万kW以上と、米国、インドネシアに次ぐ膨大な地熱資源量を誇りますが、活用がほとんどされていません。
理由は地熱発電所として有望な地域が国立公園などの中にあることによる規制や、付近の温泉地で温泉が枯渇するのではといった懸念や反対運動など様々な課題があるからです。
日本のエネルギーの約9割は海外から石油、天然ガス、石炭などの化石燃料を輸入しています。
引用:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー2019」
政治はこの課題にメスを入れて欲しいです。国会でくだらない質問しかしない野党もなぜ日本のエネルギー問題について指摘をしないのか意味がわかりません。
原発に震えた高校生の時の思い出
私が高校1年生の夏休みに、朝まで生テレビで「原発」をテーマに討論をしていました。
1986年4月26日に起こった「チェルノブイリ原子力発電所事故」があり、世界で原発事故の恐ろしさを実感していました。
調べたら私が観た朝まで生テレビは1988年7月に放送され「徹底討論・原発」と題して討論がされていました。
その論客に中に広瀬隆さんという、やたら原発に詳しい作家さんが「チェルノブイリの惨状」や「スリーマイル島の原発事故」について問題点を語り、日本にも原発が沢山あることを知った私は恐ろしくなって、「こんな不安定な国に暮らしているのか」と震えた思い出があります。
その後、10月にも「徹底討論・原発 第2弾」が放送されたのですが広瀬隆さんはいなかったのでがっかりした記憶があります。
「原発」についてすごく気になっていたのですが、16歳の私には何もすることができなくて考えることを止めました。
それから20年以上が経って東日本大地震による「福島第一原子力発電所事故」で実際に日本で原発事故が起こってしまい、16歳のときに封印した気持ちがよみがえりました。
2021年で東日本大地震は10年経ちます。
「福島第一原子力発電所事故」でエネルギーのあり方を多くの人が考えましたが、「再生可能エネルギーは高く不安定」なので「原発は必要」といった風潮がありました。
DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法を読んで「再生可能エネルギーは高く不安定」なので「原発は必要」といった考えは、ただの思考停止だったということが証明されました。
「再生可能エネルギー」を中心としたエネルギー改革は可能なんだということがわかり、心から安心しましたよ!
ちなみにDRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法では「原発」について2050年までに地球温暖化を逆転させる効果があるエネルギーとして紹介されています。
しかしながら「原子力は悔いを残す恐れのある解決策」だと提言しています。
原子力発電は温室効果ガスを発生させませんが、「悔いを残すエネルギー」です。
過去に起こった原発事故、使用済み核燃料処分問題、違法なプルトニウム密売、冷却システムによる水生生物の被害、核廃棄物を何十万年間も厳重に監視しなければないないことなどの多くの問題が「悔いを残すエネルギー」である理由です。