2030年に向けた未来予想の本はいくつかあります。
SDGsの達成目標の年である2030年の世界情勢を予測した、落合洋一さんの「2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望」でもテクノロジーの進化を予測していました。
2021年の年始にふさわしい本を探していたところ、2030年:すべてが「加速」する世界に備えよを読んでみました。
電気自動車のテスラを率いるイーロン・マスクが世界一の富豪になったというニュースが入りましたが、そのイーロン・マスクの盟友で「シリコンバレーのボス」と呼ばれるピーター・ディアマンディスが書いた米国Amazonのベストセラー本です。
2030年の未来予想としてデジタル領域の話が多いかと思いきや、医療や食料、ライフスタイルまで幅広く予測していました。
未来予測の本はネガティブなものも多いのですが、この本は新しい未来がSFの世界のようにキラキラ輝いていて読んでいてワクワクしてきます。
テクノロジーの進化が加速することで、世界中のあらゆる人がより安価に食料、エネルギー、水、教育、エンターテイメントを享受できる未来につながると書いてあります。
環境問題や貧困問題についても意識した内容となっているので、安心して読み進められることも特徴的です。
著者は楽観主義者であることをすすめていますが、言葉にすることで未来をより良い方向にしていきたいという願いもあるように感じます。
2030年:すべてが「加速」する世界に備えよの興味があるところを抜粋してまとめてみました。
「空飛ぶ車」は現実になる
ロサンゼルスは「世界で最も渋滞のひどい大都市」といわれます。
アカデミー賞をとった映画「ラ・ラ・ランド」の冒頭のシーンでも朝の大渋滞が表現されていましたが、相当ひどいらしくドライバーは年平均2週間半の時間を渋滞につかっているそうです。
その大渋滞をなんとかしようと、Uberでは「Uber Air」という空飛ぶUber構想を本気で考えているそうです。
といってもヘリコプターのようにひどい騒音やコスト高さ、頻繁に墜落するといったものでは実用化は出来ません。
空飛ぶ車を実現させるには「安全性」「騒音」「価格」をクリアしないとならないのです。
「騒音」においてはドローンの技術を応用し、「安全性」については複雑なフライトシミュレーションも機械学習を駆使し、飛行ができるほど軽量で耐久性の高い部品、パイロットと乗客4人を持ち上げるだけの電力密度を持つリチウムイオン電池など複数のテクノロジーの融合が必要となるが実現可能なのだそうです。
空飛ぶ車をエリート層だけの贅沢品ではなく、ふつうの人々の現実にするためには「価格」が重要です。
「価格」については第二次世界大戦中のB24戦闘機を2年間で1万8000台製造していた誰もまだ破っていない記録を、3Dプリンターを高速化して造り出そうと考えているそうです。
3Dプリンターって車もつくれるのか!と思ってしまいましたが、どれも実現可能のように思えてきました笑
医療&寿命延長の未来
2026年、朝の様子を表現したシーンがあります。
Googleのホームアシスタントが睡眠状態を把握してレム睡眠を終えたちょうど良いタイミングで、部屋の照明を日の出をシミュレーションして最適なタイミングで起こします。
「Google、今朝の健康状態はどう?」と聞くと「少しお待ちください」と、歯ブラシやトイレに埋め込まれたスマートセンサー、寝具や衣類に付いたウェラブルセンサー、身体にインプラントされたセンサーを総合したヘルスシステムが調べます。
「ウィルスに感染しています」と「過去48時間のミーティングを調べました。月曜日のパーティで感染したようです」なんてGoogleが言ってくれるそうです。
この本はコロナショック前に書かれた本ですが、この機能があったら安心して生活できますよね!
そして寿命延長についても予測しています。
モアイ像で有名なイースター島では「人間の生命力をコントロールする」という説があり、モアイ像の下から掘り起こされた土には抗菌作用、免疫抑制機能があることがわかりました。
その効果から臓器移植手術に使われていたが、癌の成長を抑え寿命が延びることを突き止めます。
モアイ像の土の研究は1960年半ばから始まったが、時をかけて2014年には大手製薬会社ノバルティスがアンチエイジング薬として臨床試験を実施しています。
その他、スタンフォード大学の研究グループは「ドラキュラ伝説」をもとに血液の研究をしています。昔ながらのまがまがしい血液交換の手法で、老齢マウスに若齢マウスの血液を送ったところ、さまざまな組織や臓器が若返ったそうです。
こうなってくるとオカルトやスピリチュアルの世界ですよね〜
でも科学的根拠があって大真面目に研究をして成果がでてきているそうです。
食料の未来
私が一番興味がある分野である「食料の未来」も刺激的です。
「食品ロス」や「培養肉」といった2021年でも注目されるテーマを取り扱っていましたが、面白かったのは「腐らない」テクノロジーです。
果物や野菜にはもともと腐敗を防ぐメカニズムが備わっていて、その理由は「皮」にあります。
「角皮素」という植物の一番外側の層は、水分を閉じ込めるための脂肪酸でできた蝋のような表皮があります。その表皮を強化するために100%天然の植物由来の材料を食品に噴霧して、人工的に角皮素をつくる方法が開発されています。
においも味も色もなく、この物質でコーティングしても有機食品とみなされ、この方法で保護されたアボカドは柔らかくなるまでの期間が60%も伸びるそうです。
腐らないというと極端な表現だと感じますが、鮮度を閉じ込めるという発想は面白いと思いました。
鮮度が保たれると栄養価も保たれるので、メリットは高いと思います。
ちなみに有機野菜は一般的な野菜と比べて持ちが違うと私は思います。鮮度が続くことと、腐るというより、枯れるといった印象です。
この本では「地産地消」を実現させる農業の大切さも説明しています。
農場から都市が離れていると、輸送のコストや野菜は収穫した瞬間から栄養価が低下し始めることから、都市でも農業が可能になる「垂直農法」と呼ばれる水耕栽培や空中栽培を提唱しています。
ロボットやAIに雇用が奪われるのか?
2030年:すべてが「加速」する世界に備えよでは他にも多くの未来を予測していますが、良く言われる「ロボットやAIが雇用を奪う」という説を否定しています。
歴史を振り返ると1790年のアメリカでは90%が農業を生業としてきたが、現在は2%を下回っている。それだけの雇用は工業経済やサービス経済、そして今では情報経済に変貌を変えた。
自動化が起きても悲惨な結果が起こるとは限らないと言っています。
人間の脳は「未来の自分自身を他人として扱う」習性があるそうです。
現在手にしているものと引き換えに、未来に何か新しいものが手に入るとしても、未来の方が価値が低いのではないか?という認知バイアスがあります。
これは人間が進化の過程で植え付けられた強力なバイアスで、人の習慣が変えられないのも、企業がイノベーションを生み出せないのもこのせいだそうです。
未来を知って恐怖を感じたり、ワクワクしたり、イマジネーションが膨らんでいくけれど
「深呼吸をして目をそらすな。こちらの準備などお構いなしに、未来はもうそこまで来ているのだから」
引用 2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ
と締め括られていました。
この本では「加速」という言葉が多く出てきますが、私はコロナショックによって世界はより加速していくと思います。
私にできることは何かわかりませんが。。。未来を恐れず目をそらさずに生きていきたいと思いましたよ笑